2015年10月15日木曜日

横浜スタジアム改修か、ドーム構想ヨコハマボールパーク建設か、それぞれの思惑とは

一般紙やスポーツ紙新聞各社は2015年10月14日、プロ野球横浜DeNAベイスターズが本拠地横浜スタジアムの運営会社買収を検討していると一斉に報じた。

新球場として予定する横浜ドーム、ヨコハマボールパーク構想が熱を帯びているタイミングで既存球場の運営会社買収。
球団・地元経済界・行政、それぞれの思惑は異なり球場を巡って溝が深まるばかりだ。


ハマスタ改修か横浜ドーム建設か(日経新聞神奈川版)


球団は、経営改善・収益力向上の「手段」を検討


改めて認識しておくことは、今回の買収にはスタジアムの土地や建物は含まない。
あくまでスタジアム運営会社の買収検討であるという点だ。

現在球団は運営会社へチケット売上の13%を支払い、スタジアム内の広告看板や飲食代は大半を運営会社が得ている構造となっている。
今回の買収が成立すればこれらすべてが球団のものとして得ることが出来るようになる。

今季の観客動員は180万人。DeNAが球団買収した2011年から1.7倍、座席稼働率も90%超と既に入場料収入は上限に近づいている。
一方で球団経営としては4年連続の数億円単位での赤字、新たな収益源が必要である。

そこで目を付けたのが球場運営ということである。



地元経済界は、新たな集客施設・街のにぎわい創出の「ビジョン」を検討


大都市圏の横浜市でも少子高齢化の波は押し寄せている。
これまで増加を続けていた人口も2019年頃を境に減少へ転じていく試算である。
この状況下において市内、市外から人を呼び込む必要があるとの危機感が出発点となり、ドーム構想のみならずカジノ誘致など様々な方針を打ち出している。

  • 歴史・文化の中心、横浜スタジアム
球団による運営会社買収が成立してもすぐに魅力的な球場へ改修できる訳ではない。
スタジアムの容積率は法規制の既に上限に達しており、収容人数を増やす改修は難しい。
その分、隣接する中華街と密接に連携し、歴史あるスタジアムに改修を重ね、横浜文化の中心としたい構想である。

  • 未来型港湾都市のエンターテインメント、横浜ボールパーク
3万6,000人収容、スライド式の開閉屋根、天然芝フィールド…。
今年8月、みなとみらい地区マリノスタウン跡地の開発事業者公募に応じた。
横浜市は2016年3月に事業者を決定、ドーム建設は有力な選択肢となっている。
噂では2020年東京オリンピック後に行われる神宮外苑の再整備で本拠地球場が使用できなくなるヤクルトを誘致するという話もある。


双方とも「国際観光都市ヨコハマ」の集客力強化を模索する方向性は同じ。
とは言え野球場2つは不要、地元経済界は足並みが揃わない。



行政は、スポーツ全般に視線・野球ひとつに関与せず


横浜市は今年9月、山下ふ頭再開発計画ハーバーリゾート形成の方針を打ち出した。
国際都市・横浜の顔として横浜港周辺の再開発に積極的な姿勢だ。
観光・MICEを中心とした魅力あるにぎわい創出という点ではもちろん地元経済界と同じ。

ただし、野球場については一言も触れていない。
既存スタジアム改修か、ドーム新設か、正直なところ明確な意思は無いのだろう。
報道によれば「買収されたとしても関内駅前に球場があることは変わらない」「ドーム構想は市が出したものではない」と静観の構え。

プロ野球球団があり、Jリーグ最多の3クラブがある横浜市。
2002年サッカーW杯と2019年ラグビーW杯決勝戦の舞台となり、2020年東京五輪のトライアスロン会場誘致はお台場に敗れたものの、追加提案種目となったスケボー会場の誘致を目指すなど、「総合」スポーツ都市としての姿が見える。

ひとつの競技にだけ関わっている暇は無いというところだろうか。

2015年10月8日木曜日

スタジアム新時代が到来、存続危機の三ツ沢球技場は改修か?それとも…。

横浜FCは13年ぶりにJ1を戦うが…


Jリーグは2015年9月29日、2016年シーズンのクラブライセンス判定を発表した。
スタジアムの品質向上を強く求めるJリーグは、屋根のカバー率やトイレ数の基準に満たない制裁対象のホームスタジアムと対象クラブを公表している。



「この際!」と割り切り易かったクラブ


最も厳しい制裁となるのが、屋根・トイレ両方が基準に満たない7クラブのスタジアム。
中でもJ1の4クラブ(2015シーズン時点)は対応が早かった。

以前よりスタジアム構想が持ち上がっていた広島を始め、清水、名古屋、山形でも『サッカー専用スタジアムの新設構想』を発表した。

このままではJリーグの試合が開催できなくなる、と尻に火がついた格好だ。
最も厳しい制裁対象であったのが逆に功を奏したように思われる。
こうなれば既存施設を改修するよりも新しく建てた方が良い、それであれば陸上競技場ではなくサッカー専用に、と必然的に話は進む。

サポーター念願のサッカースタジアムが実現に近づいている。

広島新スタジアムイメージ図

清水新スタジアムイメージ図




「改修?新設?」判断に迷う・または危機感が薄いクラブ


屋根が基準に満たない13クラブとトイレが基準に満たない1クラブ。

最も厳しい制裁のクラブと比較すると、ACLが開催できないという制裁のみ。
そして対象14クラブのほとんどはJ2所属、若しくはJ1定着を目指しているクラブ。
まだまだACLを意識する段階でない為かスタジアムに対する危機感が強いとは思えない。

それでもやはりJ1クラブ(2015シーズン時)は対応を進めている。
松本山雅は新スタジアムの構想を、湘南は既存スタジアムの改修構想を発表した。
その他にもC大阪はキンチョウスタジアムを将来的に4万人収容まで拡張する構想を、富山は街中スタジアム新設構想を発表している。



スタジアム存続危機の三ツ沢球技場


Jリーグ最多の3クラブ(横浜M・横浜FC・YSCC横浜)を有する横浜市。

サッカー専用である三ツ沢球技場は、1964年東京五輪のサッカー会場であり、Jリーグ誕生時から使用され、全国高校サッカー選手権の会場でもある、言わば聖地だ。

ただ、時は流れ今では三ツ沢に代わり日産スタジアムが歴史に名を刻む。
2002年サッカーW杯、2019年ラグビーW杯、2020年東京五輪サッカー会場、他にも日本代表の試合やクラブW杯が開催されている。

単純に考えれば、三ツ沢がクラブライセンス基準を満たさないのであれば日産を使用すれば良いとなるだろう。マリノスの雰囲気一色に染まるスタジアムを横浜FCが使うという心理的なものを除けばであるが。

では三ツ沢はもうお役御免なのか?
追い討ちをかけるようにスタジアムの真後ろに市民病院の移転が発表された。





もともと老朽化した団地が隣接しており、スタンドに屋根を設置するにも工事スペースすら無かったが、そこに病院が移転してくることになった。
三ツ沢公園と一体的に整備されていく計画である。

こなると騒音の問題など、むしろ通常のJリーグの試合開催ですら雲行きは怪しい。
屋根を付けてACL開催基準を満たすことなど検討テーブルにも上がらないだろう。

なぜならば地下鉄で3駅隣に国際基準を満たす日産スタジアムがあるのだから。



三ツ沢新スタジアムを実現するためには


総合的に考えて横浜市が三ツ沢球技場を改修する可能性はほぼ無いだろう。
現在の成績や人気、クラブの経営面を考慮しても横浜FCが市を動かすことは無理だ。
マリノスには日産スタジアムがある。
Jリーグで数試合、ナビスコや天皇杯で使用すると言って市を動かすことも無理だ。

八方塞がりか。

では高校サッカー選手権の試合会場として聖地三ツ沢の存続を目的に改修はどうだろう。
県内および市内の学生の健全な未来をつくる大義名分で。(教育を全面に押し出す)

さすがに7万人収容の日産スタジアムは高校サッカーには不相応だ。
近年では首都圏会場もフクアリやNACK5のように改修したスタジアムが使用されており、昔ジェフのホームであった市原臨海競技場はもう使用されていない。
このままでは三ツ沢は高校サッカーでも使用されなくなる可能性もある。

それであれば2万人規模で良い。
そこを横浜FCのホームスタジアム、マリノスの国内カップ戦用として使えば良い。

三ツ沢公園内の陸上競技場を取り壊し、そこにサッカースタジアムを建てる。
隣接する病院に配慮し、現球技場はピッチの芝生のみ残し公園として再整備し市民に解放するのはいかがだろうか?

三ツ沢新サッカースタジアムおよび市民病院移転後の配置イメージ図


2015年10月6日火曜日

等々力陸上競技場、第2期整備で陸上トラックを撤去しサッカー専用スタジアムにする唯一の方法




Jリーグ川崎フロンターレのホームスタジアム、等々力陸上競技場は2015年シーズンに新メインスタンドをオープンさせた。
今後、スタジアムを所有する川崎市は等々力緑地全体を段階的に整備し、陸上競技場は事業評価を挟み2017年より第2期整備(サイド・バックスタンドの改築)を進める計画だ。



35,000人収容の近代的スタジアムへ


川崎市による等々力緑地再整備計画

陸上競技場のメインスタンド改築を終え、次に取り掛かるのが軟式野球場の改築と公園の中央道路や広場の整備となり2017年度の完成を目指す。
それと並行して陸上競技場は2016年度に事業評価を行い、2017年度以降の第2期整備の方針を固める。

現在のサイド・バックスタンドは全面改築し、一部は半透明の屋根で覆われる。
収容人数は約35,000人となり、神奈川県内Jリーグのホームスタジアムとしては日産スタジアム(70,000人収容)に次ぐ規模となる。

現在の等々力陸上競技場

第2期整備後の完成イメージ図




サッカー専用スタジアムに出来ない理由とは


そもそも老朽化した等々力陸上競技場改修の話が持ち上がった際に、もちろんフロンターレ側はサッカー専用スタジアムの建設を要望していた。川崎市側の返答は「NO」であったがそこには物理的な問題があった。



都市公園法を基準にした等々力緑地の制約条件
  1. 公園の敷地面積に占める運動施設の上限は50%
  2. 公園の敷地面積に占める建築物の建築面積(建ぺい率)の上限は12%
検討段階の時点で既に1は40%超、2は11.8%であり、等々力緑地内にスタジアムの新設は不可能、陸上競技場の改修しか手段はない。
陸上 競技を追い出すことはもちろん出来ない、陸上トラックを残したままスタジアムの改修を行なう、と話は進んでいった。

ただし、都市公園法の告示面積に含まれていない中央公園が、仮に国(国土交通省)の方針転換があり告示された場合には、その増加分に合わせて建築可能面積も増加する。



都市公園法が変わればサッカー専用スタジアムにできる


ポイントはこれだ、「都市公園法の改定」

陸上関係者の要望は選手が自由に使える施設。第1種競技場である必要はない。
中央公園に新たに陸上施設を整備し、現陸上競技場はサッカー専用スタジアムに。

新メインスタンドはそのままで良い。
ピッチまでの距離は多少残すが可動式スタンドもあるので我慢はできる。
サイド・バックスタンド側の陸上トラックを撤去して新スタンドを作り、メインスタンドと連結すれば良いのだ。ゴール裏は三ツ沢や仙台、鳥栖に似た感じの距離感でいけるだろう。



2016年の事業評価の行方は?


日本全国でサッカー専用スタジアムの建設ラッシュが始まっている。
G大阪の4万人収容サッカースタジアムが2016年にオープンする。
すでに建設構想を発表しているのがC大阪、京都、北九州。検討段階も含めると広島、名古屋、清水、山形…。みなサッカー専用スタジアムとしての構想だ。

等々力陸上競技場の事業評価を行なう2016年、ガンバ新スタジアムの盛り上がりを目の当たりにし、やはり等々力もサッカー専用にという方向に話が進むことを願う。

2015年9月18日金曜日

2015年基準地価が発表、上昇率全国首位は大阪。



国土交通省がまとめた2015年基準地価が発表された。
この調査は大都市圏と地方中核都市、地方都市に区分される。

大都市圏

東京圏

東京都(多摩地区などの一部を除く)・神奈川県・埼玉県・千葉県・茨城県。

商業地の上昇率トップは、ブランド店が集まる表参道周辺。
横浜市、さいたま市も上昇続く。新鎌ヶ谷駅周辺がにぎわう千葉県新鎌ヶ谷市、人口増が続く千葉県流山市、武蔵小杉駅周辺で店舗が集積する川崎市中原区も大幅な上昇だった。

大阪圏

大阪府全域・京都・兵庫・奈良。

商業地は大都市圏のうち最も高い上昇率。
上昇率トップは、ミナミの大阪市中央区南船場のビル。JR大阪駅前のグランフロント大阪が2年連続で最高価格を記録した。

一方で、住宅地は大都市圏で唯一上昇しなかった。

名古屋圏

愛知県の大半と三重県の一部。

特に伸びが目立つのは名古屋駅周辺。大名古屋ビルヂングやJRタワー名古屋の開業を今秋に控え、JRゲートタワーが2017年に完成、人の流れが駅前に集中する。
2027年開業のリニア中央新幹線への期待も大きい。



地方中核都市

札幌・仙台・広島・福岡の4市。

仙台市は、地下鉄東西線の開業を12月に控え沿線の住宅地が高い。
広島市は、JRと広島高速交通が交差する地域に新白島駅ができるなど利便戦が向上。
福岡市は、博多駅前の予備校所在地が商業地上昇率トップ。全国でも10位にランクイン。
大型クルーズ着港により外国人観光客も増え、対応バスのターミナル整備計画や商業施設の建設で客足の導線が大きく変わると見込まれている。



地方都市

下落傾向に歯止めがかかりつつも、調査地点の3/4で下落。
商業地、住宅地ともに秋田県が下落率トップ。
住宅地の都道府県別価格指数は、東京都を100とすると秋田県は4.4。
東北地方は上昇の仙台市や福島県と、下落の青森県、秋田県と二極化が鮮明になった。

その他、都道府県別のデータは以下の通り。





2015年9月17日木曜日

USJ買収でテーマパーク業界の勢力地図に変化か?




2015年9月16日、ウォールストリートジャーナル日本版は、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)が米金融大手ゴールドマン・サックスなど数社が持ち株を米ケーブルテレビ最大手コムキャスト傘下のNBCユニバーサルに売却する方向で協議していると報じた。

日本のテーマパーク業界でUSJは2位。

米国映画のコンテンツに加え、「スヌーピー」「ハローキティ」「ワンピース」など人気キャラクターも活用。
2014年には「ハリーポッター」を題材にした新エリアを展開、人気を集めている。







業界1位は東京ディズニーリゾート。入場者数・売上高・営業利益と他を圧倒する。

2位のUSJは、1位・3位と大きく離れており「永遠の2位」という構図となっている。

三大都市圏が牽引するテーマパーク業界、地方都市では長崎県のハウステンボス・山梨県の富士急ハイランドが売上高200億円超と健闘しているが、大半は東京圏に所在する施設で構成される業界であることも分かる。

2015年9月15日火曜日

横浜山下ふ頭はハーバーリゾートへ。カジノ誘致へ前進

2015年9月14日、横浜市は山下ふ頭開発基本計画を発表した。
世界都市・横浜の顔としてハーバーリゾートの形成を目指すというものだ。

2015年9月15日 日経新聞



1963年に運用を開始した山下ふ頭は、現在コンテナの保管や集配作業を行う場所になっている。基本計画では約半世紀ぶりに機能を転換しハーバーリゾートの形成を目指す方針だ。


横浜市港湾局が作成した基本計画より



2020年に一部が完成、その後段階的に整備し全地の完成は2025年以降を見込む。
目玉となるのが、新たな横浜のシンボルとなる大規模施設ゾーンだ。
計画にはカジノ誘致を明記しなかったが、地元経済界では実現への期待が高まっている。

先月には、みなとみらい地区に横浜ドーム建設構想を発表。
横浜港の姿が大きく変貌する。



2015年9月14日月曜日

逗子マリーナ、高層ホテル建設問題の裏側に見える真の狙い

2015年7月30日、神奈川新聞が「逗子マリーナに130m超の高層ホテル構想」を報じた。

2020年東京五輪セーリング競技の江ノ島開催を見据え、逗子マリーナを運営するリビエラグループが同マリーナ内に高層ホテルを建設する構想を検討しているというものだ。
この報道が波紋を呼んでいる。



構想の概要とは




写真は今日の逗子マリーナ(写真上部)・小坪港(写真中央部)である。
高層ホテルは1,100人分の客室・VIPルームも兼ね備える。
防波堤の拡張そして小坪港や周辺道路の再整備も行うと、ご覧のような光景となる。


リビエラグループが作成したイメージ図


地元住民は有志団体を立ち上げ猛反対。
景観、海の生物、静かな暮らしの保護を訴えている。
地元議員はまちづくり条例の高さ制限を越す構想に疑問を投げかけている。

ただし、この高層ホテル建設問題、本質を見落としていないだろうか?



「五輪向け」は大きな勘違い?


逗子マリーナと言えば、リゾートマンション・ヨットハーバー・ウェディング。
色々なイメージがあるが、事業の収益力としてはウェディングが牽引する構図であろう。

そのウェディング業界は横ばい又は市場規模の縮小が続いている。
2014年の婚姻件数は64.3万組と戦後最少。晩婚化などによる挙式の簡素化も響く。
そしてここにきて近隣の横浜に新たな動きが出ている。



逗子マリーナはこのままでは利用者獲得も難しくなる。
鎌倉駅からバスで10分、「リゾート」を売りにしてきたが決定的に不足するものがある。
そう、ホテルだ。

宿泊だけではない。
ホテル内レストランでの2次回需要や、小坪港再整備でレジャー強化も期待できる。
東京五輪セーリング競技開催地に選ばれた今、大きなビジネスチャンスがある。

「五輪向け」と報道されたことによって”わずか2〜3日のために ”や”いくら五輪という大義名分とは言え”と、騒動が過熱してしまっている。

「五輪向け」ではなく「五輪を機に」ホテル事業への進出が真相ではないだろうか。



ふたつの「コウソウ」


あくまで「構想」段階の計画で「高層」ホテルの建設という点。
この先どのような経緯を辿るのか注目していきたい。