2015年6月13日土曜日

定額制サービス、海外勢 VS 日本勢が激化

動画配信サービス世界最大手、米国ネットフリックスが日本進出に先駆けまず吉本興業と提携したと発表された。
その翌日には米国アップルが音楽聴き放題となる「アップルミュージック」を開始すると発表した。
日本勢の同類サービスとの比較表を見ると、海外勢の料金体系は日本勢の倍近くを設定している。強気だけではない確かな根拠があるのだろうが、それは果たして…。


2015年6月9日 日経新聞
2015年6月10日 日経新聞

動画、音楽と立て続けに米国の定額制サービスが日本へ上陸してくる。
従来のコンテンツごとに料金を支払っていたビジネス構造が大きな変化を迎えるのは必至で、これがコンテンツホルダーにどのような影響をもたらすのだろうか。

飲食店で例えるならば、1品ごとに料金を支払うのか、XX円食べ放題でどれだけ食べても定額なのか。
高級牛肉の生産者は食べ放題レストランへの提供を望むのだろうか。
一般的には食べ放題で提供されるものはクオリティが低い印象だが。

映画やドラマ、音楽が同じようになるとは限らないが、超ヒット作と無名な作品が一緒に扱われてしまえば無名な作品のみが恩恵を受けることになるだろう。
音楽で言うなら無名アーティストがミュージックステーションに突如出演し有名アーティストの横に座っているのと同じことだからだ。一夜にしてスターになるチャンスもあるだろう。事実、アップルミュージク開始の記事にはこのようなことが書かれている。

この現状が続けばヒット作を持つコンテンツホルダーは敬遠がちになり、新人や無名な作品を持つコンテンツホルダーは勢いづくだろう。
ただしユーザーが期待しているのは、映画館で1回観る料金やCDシングル1枚分の料金でヒット作品が全て手に入ること。そこに無名作品が数多く露出されることは広告を見るのと同じ感覚となり、結果としてユーザーが離れていくことになることもあり得る。

定額制サービス、ユーザーの裾野を広げることには間違いないがコンテンツのクオリティをどこまで維持できるのか、今後の展開に注目したい。

2015年6月9日火曜日

企業価値10億ドル超の巨大ベンチャー、アメリカに続々誕生

創業間もない米国ベンチャーで、未上場の巨大企業が続々と生まれている。
企業価値が10億ドル(約1,250億円)を越す企業は65社となった。


2015年6月7日 日経新聞


未上場の場合の企業価値は、事業の収益性や将来性を加味して投資家が拠出した資金を集計して推計している。
今では100億ドル超(約1兆円超)の企業すら現れ、IT分野を中心にその数は7社にのぼる。

その7社を細かく見てみると、
タクシー業務をしたい個人ドライバーと顧客の仲介をするウーバーテクノロジーズ社や、
空き部屋を貸したい人と旅行客を仲介するエアビーアンドビー社が名を連ねる。
どちらも事業内容が『空いている何かと何かをマッチング』するという共通点がある。

このマッチングビジネス、日本でも流行の兆しが見えてきている。
「個人の空いている時間」という視点では専業主婦が事務作業をしたり、会社員が週末に家庭教師をしたり。
「空いている不動産」という視点ではオフィスビルの空室を貸し会議室で提供したり、マンションの空き駐車場を買い物客やレジャー客に貸すものもある。

この『空いている何かと何かをマッチング』のパターンはまだまだ増えていくだろう。

2015年6月4日木曜日

2020年東京五輪、スポンサー集めが絶好調

2015年6月現在、国内スポンサー最高位の「ゴールドパートナー」に13社が決定。1社150億円以上が目安の巨額投資する企業集めが好調のようだ。

2015年6月3日 日経新聞

五輪スポンサーはサッカーW杯など他の大会スポンサーになるのとは決定的な違いがある。
五輪には「クリーンベニュー」ルールというのがあり広告看板を置いて企業名を露出させることは出来ない。大会ロゴ等の使用や日本選手団を応援していると堂々と言えることがパートナー企業のメリットとなる。

ただし、スポーツ用品メーカーの場合は分かりやすい。日本選手団や8万人のボランティアのユニフォームを提供し、その全てにブランドロゴが表示されるからだ。日本選手が活躍し、表彰台に上がれば必ずユニフォームの胸部分にはブランドロゴが露出されることになる。
過去の五輪では日本選手団のウェア提供はアシックス、ミズノ、デサントの3社が持ち回りで担当していたが、2020年はゴールドパートナーの締結によりアシックスが独占的に担当することになった。

そこでスポーツ用品市場を少し調べてみた。

業界地図2015年版によると世界の総合メーカー2強、ナイキ(売上高約2兆8,000億円)とアディダス(売上高約2兆円)が他を大きく引き離し、2強を追うのがプーマ(売上高約4,100億円)そして日本勢のアシックス(売上高約3,300億円)とミズノ(売上高約1,800億円)などの3番手争いという構図。

アシックスの売上高構成比は、シューズ76.4%・アパレル17.4%・スポーツ用具6.2%と世界2強と比べるとシューズの割合が高くなっている。
さらに細かく見ていくと、海外売上高比率が80%前後を占めており目下の課題は「アパレル」と「日本市場」であることが見えてくる。
そこで今回のゴールドパートナー締結に踏み切ったということなのだろう。

12年のロンドン五輪ではアディダス、16年のリオ五輪ではナイキ、と2強がスポーツ用品メーカーとしてオフィシャルスポンサーを結んでいたが20年の東京五輪では2強以外のアシックスが結んだこと自体にインパクトもあるだろう。

今回のゴールドパートナー締結を機に中長期で見ればアシックスがスポーツメーカー世界3位の座を確実なものにすることが期待される。

2015年6月3日水曜日

動画配信29社、共同で直営型配信サービス開始

2015年5月29日、東宝や東映など邦画大手、ウォルト・ディズニー・ジャパンなど洋画大手、在京民放5社など29社は「ジャパン・コンテンツ・グループ(JCG)」を設立し今秋にも動画配信サイト「ボノボ」を開始すると発表した。


2015年5月30日 日経新聞


米国動画配信最大手ネットフリックスの日本進出に備えての団結とのこと。
そもそもネットフリックスとは何者なのか、少し調べてみると。

全米で6,200万人の会員を持つ映像ストリーミング配信の世界最大手。約1,000円で作品が見放題になる定額性サービスを世界50カ国で展開、売上高は4,400億円。
オリジナルドラマの制作も着手、視聴者の趣味嗜好に合わせ作品をレコメンドする機能も兼ね備えている。
グローバルメディア業界では100年に1度の変革期を迎えており、台風の目となるネット企業として注目が集まっている。

対する日本の動画配信市場はと言うと、通信事業者系(UULAやdTV等)や放送局系(キー局のオンデマンド)にレンタルビデオ系(TSUTAYAやDMM等)、メーカー系(アクトビラ)そしてネット系(YouTubeやニコ動等)と、各企業が展開しまさに乱立状態。
有料配信では定額制サービス「dTV」の会員数450万人が国内最大級。

この状態でネットフリックスが日本に上陸し定額性サービスの普及が進むと、配信事業者側がコンテンツの価格の決定にも優位となり主導権を握るようになるだろう。

今回のJCGによる直営型配信サービス「ボノボ」の特徴は、VOD方式を採用しコンテンツホルダーが配信作品と価格を自由に決定するというもの。
JCGは前述のような動画配信事業者の競合関係には無いと説明するものの、どのような影響をもたらすのか今後も注目を集めそうだ。



2015年6月1日月曜日

マリノス、みなとみらいから移転

Jリーグ横浜Fマリノスは2015年5月21日、クラブハウスや練習場の他グッズショップを備えるマリノスタウンの移転を発表した。


2015年5月22日 日経新聞神奈川版



マリノスタウンは横浜駅から徒歩15分のみなとみらい地区に2007年建設されたクラブを象徴する施設。
年間予算40億円のマリノスにとってマリノスタウンの賃借料は5億円。
たしかに対売上高比率12.5%を地代家賃が占めては経営が圧迫されるのも無理はない。
今回の移転によるコスト削減で、その予算を選手育成費などに充てるらしい。


もう少し調べてみると、Jリーグクラブの個別経営情報によると2014年1月期横浜Fマリノスの売上高は43億1,500万円、費用は43億600万円。
この費用43億円のうち、おそらく賃借料は「トップチーム運営経費」など複数項目に振り替えられているのだろう。

では、トップチーム運営経費を他クラブと比較してみると、
6億5,200万円(C大阪)、4億7,200万円(大宮)、4億4,800万円(名古屋)、4億4,300万円(横浜M)、4億3,400万円(浦和)が上位5クラブ。なおチーム人件費は別項目。

マリノスよりも大宮の方がまずいんじゃないか、セレッソ群を抜いて高額、というのもあるがそれは一旦置いておき、営業収益との比率も考慮すると経営状態としては名古屋と非常に近いことが分かる。
奇しくも両クラブとも自動車会社を親会社に持つ資金力が豊富なクラブ。
今回の経営改革は慢性的な親会社頼りという課題からの脱却への一歩としては英断と思える。

Jリーグがクラブ個別の情報を開示して以来毎年トップの浦和(2014年1月期は売上高約58億円、費用約56億円)を越す日が来ることを願う。