2015年9月18日金曜日

2015年基準地価が発表、上昇率全国首位は大阪。



国土交通省がまとめた2015年基準地価が発表された。
この調査は大都市圏と地方中核都市、地方都市に区分される。

大都市圏

東京圏

東京都(多摩地区などの一部を除く)・神奈川県・埼玉県・千葉県・茨城県。

商業地の上昇率トップは、ブランド店が集まる表参道周辺。
横浜市、さいたま市も上昇続く。新鎌ヶ谷駅周辺がにぎわう千葉県新鎌ヶ谷市、人口増が続く千葉県流山市、武蔵小杉駅周辺で店舗が集積する川崎市中原区も大幅な上昇だった。

大阪圏

大阪府全域・京都・兵庫・奈良。

商業地は大都市圏のうち最も高い上昇率。
上昇率トップは、ミナミの大阪市中央区南船場のビル。JR大阪駅前のグランフロント大阪が2年連続で最高価格を記録した。

一方で、住宅地は大都市圏で唯一上昇しなかった。

名古屋圏

愛知県の大半と三重県の一部。

特に伸びが目立つのは名古屋駅周辺。大名古屋ビルヂングやJRタワー名古屋の開業を今秋に控え、JRゲートタワーが2017年に完成、人の流れが駅前に集中する。
2027年開業のリニア中央新幹線への期待も大きい。



地方中核都市

札幌・仙台・広島・福岡の4市。

仙台市は、地下鉄東西線の開業を12月に控え沿線の住宅地が高い。
広島市は、JRと広島高速交通が交差する地域に新白島駅ができるなど利便戦が向上。
福岡市は、博多駅前の予備校所在地が商業地上昇率トップ。全国でも10位にランクイン。
大型クルーズ着港により外国人観光客も増え、対応バスのターミナル整備計画や商業施設の建設で客足の導線が大きく変わると見込まれている。



地方都市

下落傾向に歯止めがかかりつつも、調査地点の3/4で下落。
商業地、住宅地ともに秋田県が下落率トップ。
住宅地の都道府県別価格指数は、東京都を100とすると秋田県は4.4。
東北地方は上昇の仙台市や福島県と、下落の青森県、秋田県と二極化が鮮明になった。

その他、都道府県別のデータは以下の通り。





2015年9月17日木曜日

USJ買収でテーマパーク業界の勢力地図に変化か?




2015年9月16日、ウォールストリートジャーナル日本版は、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)が米金融大手ゴールドマン・サックスなど数社が持ち株を米ケーブルテレビ最大手コムキャスト傘下のNBCユニバーサルに売却する方向で協議していると報じた。

日本のテーマパーク業界でUSJは2位。

米国映画のコンテンツに加え、「スヌーピー」「ハローキティ」「ワンピース」など人気キャラクターも活用。
2014年には「ハリーポッター」を題材にした新エリアを展開、人気を集めている。







業界1位は東京ディズニーリゾート。入場者数・売上高・営業利益と他を圧倒する。

2位のUSJは、1位・3位と大きく離れており「永遠の2位」という構図となっている。

三大都市圏が牽引するテーマパーク業界、地方都市では長崎県のハウステンボス・山梨県の富士急ハイランドが売上高200億円超と健闘しているが、大半は東京圏に所在する施設で構成される業界であることも分かる。

2015年9月15日火曜日

横浜山下ふ頭はハーバーリゾートへ。カジノ誘致へ前進

2015年9月14日、横浜市は山下ふ頭開発基本計画を発表した。
世界都市・横浜の顔としてハーバーリゾートの形成を目指すというものだ。

2015年9月15日 日経新聞



1963年に運用を開始した山下ふ頭は、現在コンテナの保管や集配作業を行う場所になっている。基本計画では約半世紀ぶりに機能を転換しハーバーリゾートの形成を目指す方針だ。


横浜市港湾局が作成した基本計画より



2020年に一部が完成、その後段階的に整備し全地の完成は2025年以降を見込む。
目玉となるのが、新たな横浜のシンボルとなる大規模施設ゾーンだ。
計画にはカジノ誘致を明記しなかったが、地元経済界では実現への期待が高まっている。

先月には、みなとみらい地区に横浜ドーム建設構想を発表。
横浜港の姿が大きく変貌する。



2015年9月14日月曜日

逗子マリーナ、高層ホテル建設問題の裏側に見える真の狙い

2015年7月30日、神奈川新聞が「逗子マリーナに130m超の高層ホテル構想」を報じた。

2020年東京五輪セーリング競技の江ノ島開催を見据え、逗子マリーナを運営するリビエラグループが同マリーナ内に高層ホテルを建設する構想を検討しているというものだ。
この報道が波紋を呼んでいる。



構想の概要とは




写真は今日の逗子マリーナ(写真上部)・小坪港(写真中央部)である。
高層ホテルは1,100人分の客室・VIPルームも兼ね備える。
防波堤の拡張そして小坪港や周辺道路の再整備も行うと、ご覧のような光景となる。


リビエラグループが作成したイメージ図


地元住民は有志団体を立ち上げ猛反対。
景観、海の生物、静かな暮らしの保護を訴えている。
地元議員はまちづくり条例の高さ制限を越す構想に疑問を投げかけている。

ただし、この高層ホテル建設問題、本質を見落としていないだろうか?



「五輪向け」は大きな勘違い?


逗子マリーナと言えば、リゾートマンション・ヨットハーバー・ウェディング。
色々なイメージがあるが、事業の収益力としてはウェディングが牽引する構図であろう。

そのウェディング業界は横ばい又は市場規模の縮小が続いている。
2014年の婚姻件数は64.3万組と戦後最少。晩婚化などによる挙式の簡素化も響く。
そしてここにきて近隣の横浜に新たな動きが出ている。



逗子マリーナはこのままでは利用者獲得も難しくなる。
鎌倉駅からバスで10分、「リゾート」を売りにしてきたが決定的に不足するものがある。
そう、ホテルだ。

宿泊だけではない。
ホテル内レストランでの2次回需要や、小坪港再整備でレジャー強化も期待できる。
東京五輪セーリング競技開催地に選ばれた今、大きなビジネスチャンスがある。

「五輪向け」と報道されたことによって”わずか2〜3日のために ”や”いくら五輪という大義名分とは言え”と、騒動が過熱してしまっている。

「五輪向け」ではなく「五輪を機に」ホテル事業への進出が真相ではないだろうか。



ふたつの「コウソウ」


あくまで「構想」段階の計画で「高層」ホテルの建設という点。
この先どのような経緯を辿るのか注目していきたい。

2015年9月11日金曜日

Jリーグクラブにスポーツビジネス的経営を(後編)



Jクラブ個別経営情報開示資料(2014年度)に見るビッグクラブへの道のりとは。

ここまでのあらすじ
今回は入場料収入について、いかに収益力を高めるのか考えてみよう。
これは各クラブの共通課題だが、Jリーグ自体の課題でもある。



Jリーグクラブのチケット戦略


2014年のJリーグ全体の観客動員数は約953万人(J1約527万人・他J2、J3)
クラブごとの集客力の格差は大きく、J1最大動員数を誇るのは浦和60万人、続くのはF東京42万人、横浜M39万人。一方で柏18万人、最小は徳島15万人となっている。

上位3クラブの入場者数(A)・入場料収入(B)・平均単価(B÷A)をまとめたものが下の図。


ここでひとつの事実に気がつく。
入場者数では横浜Mを上回るF東京だが、入場料収入は逆転される。
要因は無料招待数の差とチケット単価の差と推測される。
もちろん、浦和の圧倒的な収益力に改めて気がつくとは思うが。



座席を売るな、価値を売れ


価値を売るという発想のヒントは、ベストセラーになった書籍「100円のコーラを1,000円で売る方法」に記されている。
「普通席xx円・指定席xx円」でチケットを売ることを考えていてはいけない。
「最高の環境で最高の試合をxx円で観戦する」価値を売ることを考える必要がる。

先ほどの入場者数上位3クラブのうち、F東京と横浜Mは陸上競技場を使用している。
浦和のような臨場感あるサッカー専用スタジアムがあれば…。
ただし、経営とは今持つ資産をどう活用するのか、未来の資産をどう作るのかである。
無い物ねだりばかりしていても仕方ない。

 
2002年FIFA World Cup™ではイングランド代表ベッカムもプレーした埼玉スタジアム

2002年FIFA World Cup™決勝戦の舞台となった横浜国際総合競技場(日産スタジアム)

レガシーを簡単に捨てられない、捨ててはいけないものもある。
横浜Mのホームスタジアム、日産スタジアムは周辺環境も含め都市計画の一部として整備されてきた経緯がある。スタンドからピッチが遠い、傾斜が緩やか過ぎる、色々と言われているがこのスタジアムから出て行くことは考えられない。

ホーム主催試合は年間17試合。
毎試合とはいかなくとも陸上トラックを覆う大掛かりな演出をするのも良いだろう。
W杯決勝戦のような雰囲気が観客を呼び込むのだから。



スマートスタジアムの時代


ドイツ、ドルトムントはジグナル・イドゥナ・パルクでの“BVB”-WiFiが整備され、スタジアムの全入場者が無料でインターネットを利用し、あらゆるデータサービスにアクセスできるようになると発表した。


アメリカでは、スタジアムのIT化において既に先行しており、NFLやNBLの試合会場でスマートフォン片手に専用アプリで座席に居ながら飲食物のオーダーが出来たり、マルチアングルリプレイが楽しめたりする。

日本では、川崎フロンターレが等々力競技場にJリーグ初となる導入をし、それを追うように日産スタジアム、鹿島スタジアムも導入を進めている。

2015年9月10日木曜日

Jリーグクラブにスポーツビジネス的経営を(中編)

Jクラブ個別経営情報開示資料(2014年度)に見るビッグクラブへの道のりとは。

前回の記事では、Jリーグの市場規模と収益構造を読み解いた。
今回はJリーグクラブの収入と支出の関係を見てみよう。


広告料収入はクラブの価値を表すのか?


収益構造の中で最も大きな割合を占めるのが広告料。
ユニフォームスポンサーやスタジアム看板が主な広告料収入となる。

本来、広告料金は露出数が多いほど高価になる。

タイトルがかかった試合はTV中継されるので、つまり強いチームほど露出数は増える。
スター選手が多く在籍する人気クラブは当然、注目を集めるので露出数が増える。
また、アジアチャンピオンズリーグへの出場権を持つチームは国内リーグとユニフォームのデザインを変えるのが主流のため、スポンサー数を増やすことも可能である。

ただし、親会社による実質赤字補填の要素が強い広告料収入。
2014年度の広告料収入トップ3は
  1. 名古屋 24.7億円(対売上比率60.0%)
  2. 大宮 24.0億円(対売上比率70.5%)
  3. 浦和 23.8億円(対売上比率39.6%)
資金力という観点では、巨大な親会社を持つこともクラブの競合優位性のひとつである。
と言いたいところであったが…。



チーム人件費=広告料収入


「潤沢な資金=選手・監督の獲得費用」「資金が潤沢なクラブ=ビッグクラブ」
一般的にはこうなるだろう。ただしJリーグはそう簡単な解釈にならない。

まず先に2014年度のチーム人件費を見てみよう。
選手・監督の年棒合計だ。この費用が高いクラブほどビッグネームの選手が多いはずだ。
  1. 柏 20.59億円
  2. 浦和 20.54億円
  3. 名古屋 20.53億円
浦和・名古屋は広告料収入のほとんどをチーム人件費に充てていることが分かる。
広告料収入とチーム人件費にはどういう関係があるのか?

一般的に事業計画を作る時は、すべての収益を見込んでその範囲内で費用を算出する。
収益源は順位や天候に左右され易い入場料よりも、広告料の方がシーズン開幕前に見込みは立て易い。つまり確実性の高い収益源でチーム人件費を組んでいることになる。


なお、柏の広告料収入は19.4億円なのでこの時点で1億円ほど足が出ている。
赤字覚悟の挑戦だったのか?実際に△0.3億円の営業損失となっている。

潤沢な資金を誇る大宮は毎年タイトル争いとは無縁、なんとか残留を続けていたが遂に2014年シーズンJ2へ降格した。
大宮のチーム人件費は17.2億円。横浜M(17.6億円)・F東京(17.0億円)と同規模。
ちなみに優勝した広島は13.4億円であった。



入場料収入を増やす方法は

入場者数が増えなくても入場料収入は増える!?(次回へ続く)

2015年9月9日水曜日

Jリーグクラブにスポーツビジネス的経営を(前編)




Jクラブ個別経営情報開示資料(2014年度)に見るビッグクラブへの道のりとは。


Jリーグの市場規模は870億円


2014年度の営業収入トップは浦和の58億円。
横浜M45億円、名古屋・鹿島ともに40億円、F東京・G大阪ともに38億円と続く。
J1全クラブの収入合計は593億円。
J2・J3も含めたJリーグ全体の収入合計は869億円となる。

つまりJリーグの市場規模は約870億円。
なお同規模感の市場としては「音楽配信サービス」「妖怪ウォッチ」などがある。
音楽配信サービスと言われると想像が付くが、業界の主要プレイヤー(企業)3〜4社がシェアを築く。そして多数の中小企業が残るシェアを競い合う構図となるだろう。

JリーグはJ1・J2・J3で全53クラブ。
(一般的な産業であれば)ビッグクラブが3〜4チーム、中堅クラブが7〜8クラブ、そしてJ1定着を狙うクラブや下カテゴリから上を目指す 小クラブが大多数を占めることになるだろう。



Jリーグクラブの収益構造


続いては収益構造を確認。Jリーグクラブの収入の仕組みは大きく3つとその他。
  1. 広告料(J1合計287億円)
  2. 入場料(J1合計122億円)
  3. Jリーグ配分金(J1合計39億円)
  4. その他(J1合計144億円)
グッズ売上やTV放映権料はJリーグが一括管理し、各クラブに配分される。
その他とは、アカデミー関連収入を含むが開示資料では残念ながら詳細不明。
よって各クラブの経営努力で伸ばせる収益は、広告料と入場料の2項目が主なものとなる。

費用は「チーム人件費」と「経費」「販管費」が主なものだ。
チーム人件費は選手や監督の年棒。クラブの力を左右する重要な項目だ。
経費は試合関連経費(スタジアム利用料等)など、販管費はクラブの運営スタッッフ給与等が該当すると思われる。



続く

それでは次回はクラブの資金力を見てみよう。

2015年9月4日金曜日

広島カープの成功に見る集客 -人口の約2倍、200万人動員達成へ-

日本のスポーツビジネスが発展を遂げている。

2015年9月4日の日経新聞 地域経済広島版の報道によると、プロ野球広島東洋カープの今季主催試合で初の観客動員200万人突破が見えてきたようだ。
経営面でも広島東洋カープの2014年12月期は売上高128億7,420万円、当期純利益5億7,419万円と過去最高益を達成したが、2015年12月期はさらにこれを更新する見通しだ。




プロスポーツチームの主な収益は、1.スポンサー収入・2.入場料収入・3.ユニフォーム等グッズ販売収入の3本柱である。
入場者数が伸びれば入場料は勿論だが、他の要素も左右することは間違いない。
カープは如何にして入場者数を伸ばしたのか、個人的な分析は以下の通り。


間違いなく転機は2009年、MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島(マツダスタジアム)のオープン。
旧広島市民球場を使用していた前年から一気に跳ね上がるのは新聞報道のグラフを見ても分かる。
ただし、それだけではない。
複合的な要因が重なって今季の入場者数が伸びていると推測される。

  1. スタジアム
  2. にぎわい創出
  3. スター選手
  4. チーム成績


スタジアム


「臨場感」「多様なシート設定」マツダスタジアムを表すキーワードとしてよく聞くのがこれらだが、最も大事なのが「立地」である。
日本の野球場、そのほぼ全施設は都市計画の一部として建設されたものであり、市街中心地に立地する。この要素が大きい。

にぎわい創出


「カープ女子」だけではない。B'z「RED」が果たした役割が大きい。
メジャーリーグから復帰した黒田投手の登場曲としてB'zが書き下ろした「RED」。その後に音源化されてはいるがシーズン開幕時にはマツダスタジアムで黒田登板時のみ使用されていたため、それを目的にスタジアムへ足を運んだB'zファンも多かっただろう。


スター選手

NYヤンキースから8年ぶりに古巣広島カープへ復帰した黒田博樹。
ローカルビジネスとしてプロスポーツチームが機能していればスター選手が必ずしも必要ではないが、「チームの価値」を高める上ではその必要性を今季のカープが立証しているのだろう。


チーム成績

スター選手同様、成績で入場者数が左右されないのが望ましいがそれも理想論。
過去2年間、クライマックスシリーズへ出場していることは無縁ではないだろう。「強いチーム」「タイトル」も観戦者獲得には必要である。