2015年10月15日木曜日

横浜スタジアム改修か、ドーム構想ヨコハマボールパーク建設か、それぞれの思惑とは

一般紙やスポーツ紙新聞各社は2015年10月14日、プロ野球横浜DeNAベイスターズが本拠地横浜スタジアムの運営会社買収を検討していると一斉に報じた。

新球場として予定する横浜ドーム、ヨコハマボールパーク構想が熱を帯びているタイミングで既存球場の運営会社買収。
球団・地元経済界・行政、それぞれの思惑は異なり球場を巡って溝が深まるばかりだ。


ハマスタ改修か横浜ドーム建設か(日経新聞神奈川版)


球団は、経営改善・収益力向上の「手段」を検討


改めて認識しておくことは、今回の買収にはスタジアムの土地や建物は含まない。
あくまでスタジアム運営会社の買収検討であるという点だ。

現在球団は運営会社へチケット売上の13%を支払い、スタジアム内の広告看板や飲食代は大半を運営会社が得ている構造となっている。
今回の買収が成立すればこれらすべてが球団のものとして得ることが出来るようになる。

今季の観客動員は180万人。DeNAが球団買収した2011年から1.7倍、座席稼働率も90%超と既に入場料収入は上限に近づいている。
一方で球団経営としては4年連続の数億円単位での赤字、新たな収益源が必要である。

そこで目を付けたのが球場運営ということである。



地元経済界は、新たな集客施設・街のにぎわい創出の「ビジョン」を検討


大都市圏の横浜市でも少子高齢化の波は押し寄せている。
これまで増加を続けていた人口も2019年頃を境に減少へ転じていく試算である。
この状況下において市内、市外から人を呼び込む必要があるとの危機感が出発点となり、ドーム構想のみならずカジノ誘致など様々な方針を打ち出している。

  • 歴史・文化の中心、横浜スタジアム
球団による運営会社買収が成立してもすぐに魅力的な球場へ改修できる訳ではない。
スタジアムの容積率は法規制の既に上限に達しており、収容人数を増やす改修は難しい。
その分、隣接する中華街と密接に連携し、歴史あるスタジアムに改修を重ね、横浜文化の中心としたい構想である。

  • 未来型港湾都市のエンターテインメント、横浜ボールパーク
3万6,000人収容、スライド式の開閉屋根、天然芝フィールド…。
今年8月、みなとみらい地区マリノスタウン跡地の開発事業者公募に応じた。
横浜市は2016年3月に事業者を決定、ドーム建設は有力な選択肢となっている。
噂では2020年東京オリンピック後に行われる神宮外苑の再整備で本拠地球場が使用できなくなるヤクルトを誘致するという話もある。


双方とも「国際観光都市ヨコハマ」の集客力強化を模索する方向性は同じ。
とは言え野球場2つは不要、地元経済界は足並みが揃わない。



行政は、スポーツ全般に視線・野球ひとつに関与せず


横浜市は今年9月、山下ふ頭再開発計画ハーバーリゾート形成の方針を打ち出した。
国際都市・横浜の顔として横浜港周辺の再開発に積極的な姿勢だ。
観光・MICEを中心とした魅力あるにぎわい創出という点ではもちろん地元経済界と同じ。

ただし、野球場については一言も触れていない。
既存スタジアム改修か、ドーム新設か、正直なところ明確な意思は無いのだろう。
報道によれば「買収されたとしても関内駅前に球場があることは変わらない」「ドーム構想は市が出したものではない」と静観の構え。

プロ野球球団があり、Jリーグ最多の3クラブがある横浜市。
2002年サッカーW杯と2019年ラグビーW杯決勝戦の舞台となり、2020年東京五輪のトライアスロン会場誘致はお台場に敗れたものの、追加提案種目となったスケボー会場の誘致を目指すなど、「総合」スポーツ都市としての姿が見える。

ひとつの競技にだけ関わっている暇は無いというところだろうか。

2015年10月8日木曜日

スタジアム新時代が到来、存続危機の三ツ沢球技場は改修か?それとも…。

横浜FCは13年ぶりにJ1を戦うが…


Jリーグは2015年9月29日、2016年シーズンのクラブライセンス判定を発表した。
スタジアムの品質向上を強く求めるJリーグは、屋根のカバー率やトイレ数の基準に満たない制裁対象のホームスタジアムと対象クラブを公表している。



「この際!」と割り切り易かったクラブ


最も厳しい制裁となるのが、屋根・トイレ両方が基準に満たない7クラブのスタジアム。
中でもJ1の4クラブ(2015シーズン時点)は対応が早かった。

以前よりスタジアム構想が持ち上がっていた広島を始め、清水、名古屋、山形でも『サッカー専用スタジアムの新設構想』を発表した。

このままではJリーグの試合が開催できなくなる、と尻に火がついた格好だ。
最も厳しい制裁対象であったのが逆に功を奏したように思われる。
こうなれば既存施設を改修するよりも新しく建てた方が良い、それであれば陸上競技場ではなくサッカー専用に、と必然的に話は進む。

サポーター念願のサッカースタジアムが実現に近づいている。

広島新スタジアムイメージ図

清水新スタジアムイメージ図




「改修?新設?」判断に迷う・または危機感が薄いクラブ


屋根が基準に満たない13クラブとトイレが基準に満たない1クラブ。

最も厳しい制裁のクラブと比較すると、ACLが開催できないという制裁のみ。
そして対象14クラブのほとんどはJ2所属、若しくはJ1定着を目指しているクラブ。
まだまだACLを意識する段階でない為かスタジアムに対する危機感が強いとは思えない。

それでもやはりJ1クラブ(2015シーズン時)は対応を進めている。
松本山雅は新スタジアムの構想を、湘南は既存スタジアムの改修構想を発表した。
その他にもC大阪はキンチョウスタジアムを将来的に4万人収容まで拡張する構想を、富山は街中スタジアム新設構想を発表している。



スタジアム存続危機の三ツ沢球技場


Jリーグ最多の3クラブ(横浜M・横浜FC・YSCC横浜)を有する横浜市。

サッカー専用である三ツ沢球技場は、1964年東京五輪のサッカー会場であり、Jリーグ誕生時から使用され、全国高校サッカー選手権の会場でもある、言わば聖地だ。

ただ、時は流れ今では三ツ沢に代わり日産スタジアムが歴史に名を刻む。
2002年サッカーW杯、2019年ラグビーW杯、2020年東京五輪サッカー会場、他にも日本代表の試合やクラブW杯が開催されている。

単純に考えれば、三ツ沢がクラブライセンス基準を満たさないのであれば日産を使用すれば良いとなるだろう。マリノスの雰囲気一色に染まるスタジアムを横浜FCが使うという心理的なものを除けばであるが。

では三ツ沢はもうお役御免なのか?
追い討ちをかけるようにスタジアムの真後ろに市民病院の移転が発表された。





もともと老朽化した団地が隣接しており、スタンドに屋根を設置するにも工事スペースすら無かったが、そこに病院が移転してくることになった。
三ツ沢公園と一体的に整備されていく計画である。

こなると騒音の問題など、むしろ通常のJリーグの試合開催ですら雲行きは怪しい。
屋根を付けてACL開催基準を満たすことなど検討テーブルにも上がらないだろう。

なぜならば地下鉄で3駅隣に国際基準を満たす日産スタジアムがあるのだから。



三ツ沢新スタジアムを実現するためには


総合的に考えて横浜市が三ツ沢球技場を改修する可能性はほぼ無いだろう。
現在の成績や人気、クラブの経営面を考慮しても横浜FCが市を動かすことは無理だ。
マリノスには日産スタジアムがある。
Jリーグで数試合、ナビスコや天皇杯で使用すると言って市を動かすことも無理だ。

八方塞がりか。

では高校サッカー選手権の試合会場として聖地三ツ沢の存続を目的に改修はどうだろう。
県内および市内の学生の健全な未来をつくる大義名分で。(教育を全面に押し出す)

さすがに7万人収容の日産スタジアムは高校サッカーには不相応だ。
近年では首都圏会場もフクアリやNACK5のように改修したスタジアムが使用されており、昔ジェフのホームであった市原臨海競技場はもう使用されていない。
このままでは三ツ沢は高校サッカーでも使用されなくなる可能性もある。

それであれば2万人規模で良い。
そこを横浜FCのホームスタジアム、マリノスの国内カップ戦用として使えば良い。

三ツ沢公園内の陸上競技場を取り壊し、そこにサッカースタジアムを建てる。
隣接する病院に配慮し、現球技場はピッチの芝生のみ残し公園として再整備し市民に解放するのはいかがだろうか?

三ツ沢新サッカースタジアムおよび市民病院移転後の配置イメージ図


2015年10月6日火曜日

等々力陸上競技場、第2期整備で陸上トラックを撤去しサッカー専用スタジアムにする唯一の方法




Jリーグ川崎フロンターレのホームスタジアム、等々力陸上競技場は2015年シーズンに新メインスタンドをオープンさせた。
今後、スタジアムを所有する川崎市は等々力緑地全体を段階的に整備し、陸上競技場は事業評価を挟み2017年より第2期整備(サイド・バックスタンドの改築)を進める計画だ。



35,000人収容の近代的スタジアムへ


川崎市による等々力緑地再整備計画

陸上競技場のメインスタンド改築を終え、次に取り掛かるのが軟式野球場の改築と公園の中央道路や広場の整備となり2017年度の完成を目指す。
それと並行して陸上競技場は2016年度に事業評価を行い、2017年度以降の第2期整備の方針を固める。

現在のサイド・バックスタンドは全面改築し、一部は半透明の屋根で覆われる。
収容人数は約35,000人となり、神奈川県内Jリーグのホームスタジアムとしては日産スタジアム(70,000人収容)に次ぐ規模となる。

現在の等々力陸上競技場

第2期整備後の完成イメージ図




サッカー専用スタジアムに出来ない理由とは


そもそも老朽化した等々力陸上競技場改修の話が持ち上がった際に、もちろんフロンターレ側はサッカー専用スタジアムの建設を要望していた。川崎市側の返答は「NO」であったがそこには物理的な問題があった。



都市公園法を基準にした等々力緑地の制約条件
  1. 公園の敷地面積に占める運動施設の上限は50%
  2. 公園の敷地面積に占める建築物の建築面積(建ぺい率)の上限は12%
検討段階の時点で既に1は40%超、2は11.8%であり、等々力緑地内にスタジアムの新設は不可能、陸上競技場の改修しか手段はない。
陸上 競技を追い出すことはもちろん出来ない、陸上トラックを残したままスタジアムの改修を行なう、と話は進んでいった。

ただし、都市公園法の告示面積に含まれていない中央公園が、仮に国(国土交通省)の方針転換があり告示された場合には、その増加分に合わせて建築可能面積も増加する。



都市公園法が変わればサッカー専用スタジアムにできる


ポイントはこれだ、「都市公園法の改定」

陸上関係者の要望は選手が自由に使える施設。第1種競技場である必要はない。
中央公園に新たに陸上施設を整備し、現陸上競技場はサッカー専用スタジアムに。

新メインスタンドはそのままで良い。
ピッチまでの距離は多少残すが可動式スタンドもあるので我慢はできる。
サイド・バックスタンド側の陸上トラックを撤去して新スタンドを作り、メインスタンドと連結すれば良いのだ。ゴール裏は三ツ沢や仙台、鳥栖に似た感じの距離感でいけるだろう。



2016年の事業評価の行方は?


日本全国でサッカー専用スタジアムの建設ラッシュが始まっている。
G大阪の4万人収容サッカースタジアムが2016年にオープンする。
すでに建設構想を発表しているのがC大阪、京都、北九州。検討段階も含めると広島、名古屋、清水、山形…。みなサッカー専用スタジアムとしての構想だ。

等々力陸上競技場の事業評価を行なう2016年、ガンバ新スタジアムの盛り上がりを目の当たりにし、やはり等々力もサッカー専用にという方向に話が進むことを願う。

2015年9月18日金曜日

2015年基準地価が発表、上昇率全国首位は大阪。



国土交通省がまとめた2015年基準地価が発表された。
この調査は大都市圏と地方中核都市、地方都市に区分される。

大都市圏

東京圏

東京都(多摩地区などの一部を除く)・神奈川県・埼玉県・千葉県・茨城県。

商業地の上昇率トップは、ブランド店が集まる表参道周辺。
横浜市、さいたま市も上昇続く。新鎌ヶ谷駅周辺がにぎわう千葉県新鎌ヶ谷市、人口増が続く千葉県流山市、武蔵小杉駅周辺で店舗が集積する川崎市中原区も大幅な上昇だった。

大阪圏

大阪府全域・京都・兵庫・奈良。

商業地は大都市圏のうち最も高い上昇率。
上昇率トップは、ミナミの大阪市中央区南船場のビル。JR大阪駅前のグランフロント大阪が2年連続で最高価格を記録した。

一方で、住宅地は大都市圏で唯一上昇しなかった。

名古屋圏

愛知県の大半と三重県の一部。

特に伸びが目立つのは名古屋駅周辺。大名古屋ビルヂングやJRタワー名古屋の開業を今秋に控え、JRゲートタワーが2017年に完成、人の流れが駅前に集中する。
2027年開業のリニア中央新幹線への期待も大きい。



地方中核都市

札幌・仙台・広島・福岡の4市。

仙台市は、地下鉄東西線の開業を12月に控え沿線の住宅地が高い。
広島市は、JRと広島高速交通が交差する地域に新白島駅ができるなど利便戦が向上。
福岡市は、博多駅前の予備校所在地が商業地上昇率トップ。全国でも10位にランクイン。
大型クルーズ着港により外国人観光客も増え、対応バスのターミナル整備計画や商業施設の建設で客足の導線が大きく変わると見込まれている。



地方都市

下落傾向に歯止めがかかりつつも、調査地点の3/4で下落。
商業地、住宅地ともに秋田県が下落率トップ。
住宅地の都道府県別価格指数は、東京都を100とすると秋田県は4.4。
東北地方は上昇の仙台市や福島県と、下落の青森県、秋田県と二極化が鮮明になった。

その他、都道府県別のデータは以下の通り。





2015年9月17日木曜日

USJ買収でテーマパーク業界の勢力地図に変化か?




2015年9月16日、ウォールストリートジャーナル日本版は、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)が米金融大手ゴールドマン・サックスなど数社が持ち株を米ケーブルテレビ最大手コムキャスト傘下のNBCユニバーサルに売却する方向で協議していると報じた。

日本のテーマパーク業界でUSJは2位。

米国映画のコンテンツに加え、「スヌーピー」「ハローキティ」「ワンピース」など人気キャラクターも活用。
2014年には「ハリーポッター」を題材にした新エリアを展開、人気を集めている。







業界1位は東京ディズニーリゾート。入場者数・売上高・営業利益と他を圧倒する。

2位のUSJは、1位・3位と大きく離れており「永遠の2位」という構図となっている。

三大都市圏が牽引するテーマパーク業界、地方都市では長崎県のハウステンボス・山梨県の富士急ハイランドが売上高200億円超と健闘しているが、大半は東京圏に所在する施設で構成される業界であることも分かる。

2015年9月15日火曜日

横浜山下ふ頭はハーバーリゾートへ。カジノ誘致へ前進

2015年9月14日、横浜市は山下ふ頭開発基本計画を発表した。
世界都市・横浜の顔としてハーバーリゾートの形成を目指すというものだ。

2015年9月15日 日経新聞



1963年に運用を開始した山下ふ頭は、現在コンテナの保管や集配作業を行う場所になっている。基本計画では約半世紀ぶりに機能を転換しハーバーリゾートの形成を目指す方針だ。


横浜市港湾局が作成した基本計画より



2020年に一部が完成、その後段階的に整備し全地の完成は2025年以降を見込む。
目玉となるのが、新たな横浜のシンボルとなる大規模施設ゾーンだ。
計画にはカジノ誘致を明記しなかったが、地元経済界では実現への期待が高まっている。

先月には、みなとみらい地区に横浜ドーム建設構想を発表。
横浜港の姿が大きく変貌する。



2015年9月14日月曜日

逗子マリーナ、高層ホテル建設問題の裏側に見える真の狙い

2015年7月30日、神奈川新聞が「逗子マリーナに130m超の高層ホテル構想」を報じた。

2020年東京五輪セーリング競技の江ノ島開催を見据え、逗子マリーナを運営するリビエラグループが同マリーナ内に高層ホテルを建設する構想を検討しているというものだ。
この報道が波紋を呼んでいる。



構想の概要とは




写真は今日の逗子マリーナ(写真上部)・小坪港(写真中央部)である。
高層ホテルは1,100人分の客室・VIPルームも兼ね備える。
防波堤の拡張そして小坪港や周辺道路の再整備も行うと、ご覧のような光景となる。


リビエラグループが作成したイメージ図


地元住民は有志団体を立ち上げ猛反対。
景観、海の生物、静かな暮らしの保護を訴えている。
地元議員はまちづくり条例の高さ制限を越す構想に疑問を投げかけている。

ただし、この高層ホテル建設問題、本質を見落としていないだろうか?



「五輪向け」は大きな勘違い?


逗子マリーナと言えば、リゾートマンション・ヨットハーバー・ウェディング。
色々なイメージがあるが、事業の収益力としてはウェディングが牽引する構図であろう。

そのウェディング業界は横ばい又は市場規模の縮小が続いている。
2014年の婚姻件数は64.3万組と戦後最少。晩婚化などによる挙式の簡素化も響く。
そしてここにきて近隣の横浜に新たな動きが出ている。



逗子マリーナはこのままでは利用者獲得も難しくなる。
鎌倉駅からバスで10分、「リゾート」を売りにしてきたが決定的に不足するものがある。
そう、ホテルだ。

宿泊だけではない。
ホテル内レストランでの2次回需要や、小坪港再整備でレジャー強化も期待できる。
東京五輪セーリング競技開催地に選ばれた今、大きなビジネスチャンスがある。

「五輪向け」と報道されたことによって”わずか2〜3日のために ”や”いくら五輪という大義名分とは言え”と、騒動が過熱してしまっている。

「五輪向け」ではなく「五輪を機に」ホテル事業への進出が真相ではないだろうか。



ふたつの「コウソウ」


あくまで「構想」段階の計画で「高層」ホテルの建設という点。
この先どのような経緯を辿るのか注目していきたい。

2015年9月11日金曜日

Jリーグクラブにスポーツビジネス的経営を(後編)



Jクラブ個別経営情報開示資料(2014年度)に見るビッグクラブへの道のりとは。

ここまでのあらすじ
今回は入場料収入について、いかに収益力を高めるのか考えてみよう。
これは各クラブの共通課題だが、Jリーグ自体の課題でもある。



Jリーグクラブのチケット戦略


2014年のJリーグ全体の観客動員数は約953万人(J1約527万人・他J2、J3)
クラブごとの集客力の格差は大きく、J1最大動員数を誇るのは浦和60万人、続くのはF東京42万人、横浜M39万人。一方で柏18万人、最小は徳島15万人となっている。

上位3クラブの入場者数(A)・入場料収入(B)・平均単価(B÷A)をまとめたものが下の図。


ここでひとつの事実に気がつく。
入場者数では横浜Mを上回るF東京だが、入場料収入は逆転される。
要因は無料招待数の差とチケット単価の差と推測される。
もちろん、浦和の圧倒的な収益力に改めて気がつくとは思うが。



座席を売るな、価値を売れ


価値を売るという発想のヒントは、ベストセラーになった書籍「100円のコーラを1,000円で売る方法」に記されている。
「普通席xx円・指定席xx円」でチケットを売ることを考えていてはいけない。
「最高の環境で最高の試合をxx円で観戦する」価値を売ることを考える必要がる。

先ほどの入場者数上位3クラブのうち、F東京と横浜Mは陸上競技場を使用している。
浦和のような臨場感あるサッカー専用スタジアムがあれば…。
ただし、経営とは今持つ資産をどう活用するのか、未来の資産をどう作るのかである。
無い物ねだりばかりしていても仕方ない。

 
2002年FIFA World Cup™ではイングランド代表ベッカムもプレーした埼玉スタジアム

2002年FIFA World Cup™決勝戦の舞台となった横浜国際総合競技場(日産スタジアム)

レガシーを簡単に捨てられない、捨ててはいけないものもある。
横浜Mのホームスタジアム、日産スタジアムは周辺環境も含め都市計画の一部として整備されてきた経緯がある。スタンドからピッチが遠い、傾斜が緩やか過ぎる、色々と言われているがこのスタジアムから出て行くことは考えられない。

ホーム主催試合は年間17試合。
毎試合とはいかなくとも陸上トラックを覆う大掛かりな演出をするのも良いだろう。
W杯決勝戦のような雰囲気が観客を呼び込むのだから。



スマートスタジアムの時代


ドイツ、ドルトムントはジグナル・イドゥナ・パルクでの“BVB”-WiFiが整備され、スタジアムの全入場者が無料でインターネットを利用し、あらゆるデータサービスにアクセスできるようになると発表した。


アメリカでは、スタジアムのIT化において既に先行しており、NFLやNBLの試合会場でスマートフォン片手に専用アプリで座席に居ながら飲食物のオーダーが出来たり、マルチアングルリプレイが楽しめたりする。

日本では、川崎フロンターレが等々力競技場にJリーグ初となる導入をし、それを追うように日産スタジアム、鹿島スタジアムも導入を進めている。

2015年9月10日木曜日

Jリーグクラブにスポーツビジネス的経営を(中編)

Jクラブ個別経営情報開示資料(2014年度)に見るビッグクラブへの道のりとは。

前回の記事では、Jリーグの市場規模と収益構造を読み解いた。
今回はJリーグクラブの収入と支出の関係を見てみよう。


広告料収入はクラブの価値を表すのか?


収益構造の中で最も大きな割合を占めるのが広告料。
ユニフォームスポンサーやスタジアム看板が主な広告料収入となる。

本来、広告料金は露出数が多いほど高価になる。

タイトルがかかった試合はTV中継されるので、つまり強いチームほど露出数は増える。
スター選手が多く在籍する人気クラブは当然、注目を集めるので露出数が増える。
また、アジアチャンピオンズリーグへの出場権を持つチームは国内リーグとユニフォームのデザインを変えるのが主流のため、スポンサー数を増やすことも可能である。

ただし、親会社による実質赤字補填の要素が強い広告料収入。
2014年度の広告料収入トップ3は
  1. 名古屋 24.7億円(対売上比率60.0%)
  2. 大宮 24.0億円(対売上比率70.5%)
  3. 浦和 23.8億円(対売上比率39.6%)
資金力という観点では、巨大な親会社を持つこともクラブの競合優位性のひとつである。
と言いたいところであったが…。



チーム人件費=広告料収入


「潤沢な資金=選手・監督の獲得費用」「資金が潤沢なクラブ=ビッグクラブ」
一般的にはこうなるだろう。ただしJリーグはそう簡単な解釈にならない。

まず先に2014年度のチーム人件費を見てみよう。
選手・監督の年棒合計だ。この費用が高いクラブほどビッグネームの選手が多いはずだ。
  1. 柏 20.59億円
  2. 浦和 20.54億円
  3. 名古屋 20.53億円
浦和・名古屋は広告料収入のほとんどをチーム人件費に充てていることが分かる。
広告料収入とチーム人件費にはどういう関係があるのか?

一般的に事業計画を作る時は、すべての収益を見込んでその範囲内で費用を算出する。
収益源は順位や天候に左右され易い入場料よりも、広告料の方がシーズン開幕前に見込みは立て易い。つまり確実性の高い収益源でチーム人件費を組んでいることになる。


なお、柏の広告料収入は19.4億円なのでこの時点で1億円ほど足が出ている。
赤字覚悟の挑戦だったのか?実際に△0.3億円の営業損失となっている。

潤沢な資金を誇る大宮は毎年タイトル争いとは無縁、なんとか残留を続けていたが遂に2014年シーズンJ2へ降格した。
大宮のチーム人件費は17.2億円。横浜M(17.6億円)・F東京(17.0億円)と同規模。
ちなみに優勝した広島は13.4億円であった。



入場料収入を増やす方法は

入場者数が増えなくても入場料収入は増える!?(次回へ続く)

2015年9月9日水曜日

Jリーグクラブにスポーツビジネス的経営を(前編)




Jクラブ個別経営情報開示資料(2014年度)に見るビッグクラブへの道のりとは。


Jリーグの市場規模は870億円


2014年度の営業収入トップは浦和の58億円。
横浜M45億円、名古屋・鹿島ともに40億円、F東京・G大阪ともに38億円と続く。
J1全クラブの収入合計は593億円。
J2・J3も含めたJリーグ全体の収入合計は869億円となる。

つまりJリーグの市場規模は約870億円。
なお同規模感の市場としては「音楽配信サービス」「妖怪ウォッチ」などがある。
音楽配信サービスと言われると想像が付くが、業界の主要プレイヤー(企業)3〜4社がシェアを築く。そして多数の中小企業が残るシェアを競い合う構図となるだろう。

JリーグはJ1・J2・J3で全53クラブ。
(一般的な産業であれば)ビッグクラブが3〜4チーム、中堅クラブが7〜8クラブ、そしてJ1定着を狙うクラブや下カテゴリから上を目指す 小クラブが大多数を占めることになるだろう。



Jリーグクラブの収益構造


続いては収益構造を確認。Jリーグクラブの収入の仕組みは大きく3つとその他。
  1. 広告料(J1合計287億円)
  2. 入場料(J1合計122億円)
  3. Jリーグ配分金(J1合計39億円)
  4. その他(J1合計144億円)
グッズ売上やTV放映権料はJリーグが一括管理し、各クラブに配分される。
その他とは、アカデミー関連収入を含むが開示資料では残念ながら詳細不明。
よって各クラブの経営努力で伸ばせる収益は、広告料と入場料の2項目が主なものとなる。

費用は「チーム人件費」と「経費」「販管費」が主なものだ。
チーム人件費は選手や監督の年棒。クラブの力を左右する重要な項目だ。
経費は試合関連経費(スタジアム利用料等)など、販管費はクラブの運営スタッッフ給与等が該当すると思われる。



続く

それでは次回はクラブの資金力を見てみよう。

2015年9月4日金曜日

広島カープの成功に見る集客 -人口の約2倍、200万人動員達成へ-

日本のスポーツビジネスが発展を遂げている。

2015年9月4日の日経新聞 地域経済広島版の報道によると、プロ野球広島東洋カープの今季主催試合で初の観客動員200万人突破が見えてきたようだ。
経営面でも広島東洋カープの2014年12月期は売上高128億7,420万円、当期純利益5億7,419万円と過去最高益を達成したが、2015年12月期はさらにこれを更新する見通しだ。




プロスポーツチームの主な収益は、1.スポンサー収入・2.入場料収入・3.ユニフォーム等グッズ販売収入の3本柱である。
入場者数が伸びれば入場料は勿論だが、他の要素も左右することは間違いない。
カープは如何にして入場者数を伸ばしたのか、個人的な分析は以下の通り。


間違いなく転機は2009年、MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島(マツダスタジアム)のオープン。
旧広島市民球場を使用していた前年から一気に跳ね上がるのは新聞報道のグラフを見ても分かる。
ただし、それだけではない。
複合的な要因が重なって今季の入場者数が伸びていると推測される。

  1. スタジアム
  2. にぎわい創出
  3. スター選手
  4. チーム成績


スタジアム


「臨場感」「多様なシート設定」マツダスタジアムを表すキーワードとしてよく聞くのがこれらだが、最も大事なのが「立地」である。
日本の野球場、そのほぼ全施設は都市計画の一部として建設されたものであり、市街中心地に立地する。この要素が大きい。

にぎわい創出


「カープ女子」だけではない。B'z「RED」が果たした役割が大きい。
メジャーリーグから復帰した黒田投手の登場曲としてB'zが書き下ろした「RED」。その後に音源化されてはいるがシーズン開幕時にはマツダスタジアムで黒田登板時のみ使用されていたため、それを目的にスタジアムへ足を運んだB'zファンも多かっただろう。


スター選手

NYヤンキースから8年ぶりに古巣広島カープへ復帰した黒田博樹。
ローカルビジネスとしてプロスポーツチームが機能していればスター選手が必ずしも必要ではないが、「チームの価値」を高める上ではその必要性を今季のカープが立証しているのだろう。


チーム成績

スター選手同様、成績で入場者数が左右されないのが望ましいがそれも理想論。
過去2年間、クライマックスシリーズへ出場していることは無縁ではないだろう。「強いチーム」「タイトル」も観戦者獲得には必要である。

2015年8月26日水曜日

横浜ドーム構想「横浜ボールパーク」建設へ

日経新聞 地域経済神奈川版でも連日報道されている、横浜ドーム構想とは。


地元経済界で構成される「横浜ドームを実現する会」の提言資料が発表されたのが2014年7月。
建設計画地は2箇所が想定されていた。
MM21地区のマリノスタウン移転後跡地と山下埠頭の再整備予定地だ。
ただしこの時点ではマリノスタウン移転は噂でしかなかった。


2015年に入ると事態が動き始める。
5月、マリノスタウン移転が正式に発表される。跡地利用については横浜市が公募することも同時に公表された。
そして8月、横浜青年会議所は山下埠頭にカジノ誘致・マリノスタウン跡地にドーム建設、市庁舎跡地に博物館の建設を柱とした提言を発表した。





横浜市は2016年3月に事業者を決定するとしている。


横浜ドーム建設候補地

横浜ドーム外観イメージ

横浜ドーム内観イメージ

2015年6月13日土曜日

定額制サービス、海外勢 VS 日本勢が激化

動画配信サービス世界最大手、米国ネットフリックスが日本進出に先駆けまず吉本興業と提携したと発表された。
その翌日には米国アップルが音楽聴き放題となる「アップルミュージック」を開始すると発表した。
日本勢の同類サービスとの比較表を見ると、海外勢の料金体系は日本勢の倍近くを設定している。強気だけではない確かな根拠があるのだろうが、それは果たして…。


2015年6月9日 日経新聞
2015年6月10日 日経新聞

動画、音楽と立て続けに米国の定額制サービスが日本へ上陸してくる。
従来のコンテンツごとに料金を支払っていたビジネス構造が大きな変化を迎えるのは必至で、これがコンテンツホルダーにどのような影響をもたらすのだろうか。

飲食店で例えるならば、1品ごとに料金を支払うのか、XX円食べ放題でどれだけ食べても定額なのか。
高級牛肉の生産者は食べ放題レストランへの提供を望むのだろうか。
一般的には食べ放題で提供されるものはクオリティが低い印象だが。

映画やドラマ、音楽が同じようになるとは限らないが、超ヒット作と無名な作品が一緒に扱われてしまえば無名な作品のみが恩恵を受けることになるだろう。
音楽で言うなら無名アーティストがミュージックステーションに突如出演し有名アーティストの横に座っているのと同じことだからだ。一夜にしてスターになるチャンスもあるだろう。事実、アップルミュージク開始の記事にはこのようなことが書かれている。

この現状が続けばヒット作を持つコンテンツホルダーは敬遠がちになり、新人や無名な作品を持つコンテンツホルダーは勢いづくだろう。
ただしユーザーが期待しているのは、映画館で1回観る料金やCDシングル1枚分の料金でヒット作品が全て手に入ること。そこに無名作品が数多く露出されることは広告を見るのと同じ感覚となり、結果としてユーザーが離れていくことになることもあり得る。

定額制サービス、ユーザーの裾野を広げることには間違いないがコンテンツのクオリティをどこまで維持できるのか、今後の展開に注目したい。

2015年6月9日火曜日

企業価値10億ドル超の巨大ベンチャー、アメリカに続々誕生

創業間もない米国ベンチャーで、未上場の巨大企業が続々と生まれている。
企業価値が10億ドル(約1,250億円)を越す企業は65社となった。


2015年6月7日 日経新聞


未上場の場合の企業価値は、事業の収益性や将来性を加味して投資家が拠出した資金を集計して推計している。
今では100億ドル超(約1兆円超)の企業すら現れ、IT分野を中心にその数は7社にのぼる。

その7社を細かく見てみると、
タクシー業務をしたい個人ドライバーと顧客の仲介をするウーバーテクノロジーズ社や、
空き部屋を貸したい人と旅行客を仲介するエアビーアンドビー社が名を連ねる。
どちらも事業内容が『空いている何かと何かをマッチング』するという共通点がある。

このマッチングビジネス、日本でも流行の兆しが見えてきている。
「個人の空いている時間」という視点では専業主婦が事務作業をしたり、会社員が週末に家庭教師をしたり。
「空いている不動産」という視点ではオフィスビルの空室を貸し会議室で提供したり、マンションの空き駐車場を買い物客やレジャー客に貸すものもある。

この『空いている何かと何かをマッチング』のパターンはまだまだ増えていくだろう。

2015年6月4日木曜日

2020年東京五輪、スポンサー集めが絶好調

2015年6月現在、国内スポンサー最高位の「ゴールドパートナー」に13社が決定。1社150億円以上が目安の巨額投資する企業集めが好調のようだ。

2015年6月3日 日経新聞

五輪スポンサーはサッカーW杯など他の大会スポンサーになるのとは決定的な違いがある。
五輪には「クリーンベニュー」ルールというのがあり広告看板を置いて企業名を露出させることは出来ない。大会ロゴ等の使用や日本選手団を応援していると堂々と言えることがパートナー企業のメリットとなる。

ただし、スポーツ用品メーカーの場合は分かりやすい。日本選手団や8万人のボランティアのユニフォームを提供し、その全てにブランドロゴが表示されるからだ。日本選手が活躍し、表彰台に上がれば必ずユニフォームの胸部分にはブランドロゴが露出されることになる。
過去の五輪では日本選手団のウェア提供はアシックス、ミズノ、デサントの3社が持ち回りで担当していたが、2020年はゴールドパートナーの締結によりアシックスが独占的に担当することになった。

そこでスポーツ用品市場を少し調べてみた。

業界地図2015年版によると世界の総合メーカー2強、ナイキ(売上高約2兆8,000億円)とアディダス(売上高約2兆円)が他を大きく引き離し、2強を追うのがプーマ(売上高約4,100億円)そして日本勢のアシックス(売上高約3,300億円)とミズノ(売上高約1,800億円)などの3番手争いという構図。

アシックスの売上高構成比は、シューズ76.4%・アパレル17.4%・スポーツ用具6.2%と世界2強と比べるとシューズの割合が高くなっている。
さらに細かく見ていくと、海外売上高比率が80%前後を占めており目下の課題は「アパレル」と「日本市場」であることが見えてくる。
そこで今回のゴールドパートナー締結に踏み切ったということなのだろう。

12年のロンドン五輪ではアディダス、16年のリオ五輪ではナイキ、と2強がスポーツ用品メーカーとしてオフィシャルスポンサーを結んでいたが20年の東京五輪では2強以外のアシックスが結んだこと自体にインパクトもあるだろう。

今回のゴールドパートナー締結を機に中長期で見ればアシックスがスポーツメーカー世界3位の座を確実なものにすることが期待される。

2015年6月3日水曜日

動画配信29社、共同で直営型配信サービス開始

2015年5月29日、東宝や東映など邦画大手、ウォルト・ディズニー・ジャパンなど洋画大手、在京民放5社など29社は「ジャパン・コンテンツ・グループ(JCG)」を設立し今秋にも動画配信サイト「ボノボ」を開始すると発表した。


2015年5月30日 日経新聞


米国動画配信最大手ネットフリックスの日本進出に備えての団結とのこと。
そもそもネットフリックスとは何者なのか、少し調べてみると。

全米で6,200万人の会員を持つ映像ストリーミング配信の世界最大手。約1,000円で作品が見放題になる定額性サービスを世界50カ国で展開、売上高は4,400億円。
オリジナルドラマの制作も着手、視聴者の趣味嗜好に合わせ作品をレコメンドする機能も兼ね備えている。
グローバルメディア業界では100年に1度の変革期を迎えており、台風の目となるネット企業として注目が集まっている。

対する日本の動画配信市場はと言うと、通信事業者系(UULAやdTV等)や放送局系(キー局のオンデマンド)にレンタルビデオ系(TSUTAYAやDMM等)、メーカー系(アクトビラ)そしてネット系(YouTubeやニコ動等)と、各企業が展開しまさに乱立状態。
有料配信では定額制サービス「dTV」の会員数450万人が国内最大級。

この状態でネットフリックスが日本に上陸し定額性サービスの普及が進むと、配信事業者側がコンテンツの価格の決定にも優位となり主導権を握るようになるだろう。

今回のJCGによる直営型配信サービス「ボノボ」の特徴は、VOD方式を採用しコンテンツホルダーが配信作品と価格を自由に決定するというもの。
JCGは前述のような動画配信事業者の競合関係には無いと説明するものの、どのような影響をもたらすのか今後も注目を集めそうだ。



2015年6月1日月曜日

マリノス、みなとみらいから移転

Jリーグ横浜Fマリノスは2015年5月21日、クラブハウスや練習場の他グッズショップを備えるマリノスタウンの移転を発表した。


2015年5月22日 日経新聞神奈川版



マリノスタウンは横浜駅から徒歩15分のみなとみらい地区に2007年建設されたクラブを象徴する施設。
年間予算40億円のマリノスにとってマリノスタウンの賃借料は5億円。
たしかに対売上高比率12.5%を地代家賃が占めては経営が圧迫されるのも無理はない。
今回の移転によるコスト削減で、その予算を選手育成費などに充てるらしい。


もう少し調べてみると、Jリーグクラブの個別経営情報によると2014年1月期横浜Fマリノスの売上高は43億1,500万円、費用は43億600万円。
この費用43億円のうち、おそらく賃借料は「トップチーム運営経費」など複数項目に振り替えられているのだろう。

では、トップチーム運営経費を他クラブと比較してみると、
6億5,200万円(C大阪)、4億7,200万円(大宮)、4億4,800万円(名古屋)、4億4,300万円(横浜M)、4億3,400万円(浦和)が上位5クラブ。なおチーム人件費は別項目。

マリノスよりも大宮の方がまずいんじゃないか、セレッソ群を抜いて高額、というのもあるがそれは一旦置いておき、営業収益との比率も考慮すると経営状態としては名古屋と非常に近いことが分かる。
奇しくも両クラブとも自動車会社を親会社に持つ資金力が豊富なクラブ。
今回の経営改革は慢性的な親会社頼りという課題からの脱却への一歩としては英断と思える。

Jリーグがクラブ個別の情報を開示して以来毎年トップの浦和(2014年1月期は売上高約58億円、費用約56億円)を越す日が来ることを願う。